心不全とは?ABOUT
心臓は体中に血液を送り続けるポンプです。生まれたときから、休むことなく、止まることなく働き続けています。しかし、高血圧、心筋梗塞、心房細動などの不整脈、弁膜症、心筋症といった病気により、十分に心臓が働くことができなくなることがあります。これを心不全と言います。また、心不全は、再発が多く、徐々に悪くなり、寿命を短くする病気でもあります。日本循環器学会・日本心不全学会のガイドラインでは、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」とされています。
心不全の症状は?SYMPTONS
心不全の症状は様々です。診察でよく聞く症状は、息切れ、胸痛、胸部不快、動悸といったものです。心不全になると全身や肺に送った血液が心臓に戻りづらくなるために血液のうっ滞が多くみられます。肺にうっ滞がおこると、夜間に咳が出たり、就寝中に横になると息苦しくなり起きていると楽になるという症状、靴を履く時などかがみ込んだり、お辞儀の姿勢をすると息が苦しくなる症状がみられます。また、全身に血液がうっ滞すると、手足や顔がむくむ症状、1週間で合計2kg以上の急激な体重増加、夜間の頻尿などがおこります。一方で、心不全により全身に血液を送りにくくなると、手足の冷え、慢性的な疲労感、失神などの症状となります。
心不全はどうやって診断するの?DIAGNOSIS
心不全の診断は、問診(症状や病歴の話をお聞きする)ことからはじまります。まずは、心不全リスクを評価します。高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病はないか、喫煙はしていないか、抗癌剤療法や放射線療法を受けたことがないか、という併存する疾患の有無をお聞きします。続いて、心臓病(左室肥大、心筋梗塞、弁膜症、不整脈、心筋症、心不全など)と診断されたことがないかを聞きます。そして、ご家族に心臓病や突然死の方がいないかをお聞きし、心不全リスク評価とします。その上で、前述した息切れや浮腫みなどの心不全症状がないかを評価します。続いて、バイタルサイン(血圧・脈拍・酸素飽和度)、頚静脈怒張、呼吸音、心雑音、心音(Ⅲ音・Ⅳ音)、下肢浮腫などの診察所見を評価します。このような問診と診察で心不全が疑われれば、心電図、心臓エコー、血液検査(心不全のマーカーであるBNP、NT-ProBNP)を評価して、心不全の診断を行っていきます。
心不全と言われたらINSPECTION
心不全と言われたら、循環器専門医の診察を受けることをお勧めします。心電図、心臓エコー検査、運動負荷心電図検査などによる原因精査、心不全を引き起こしたり、悪くしたりする要因の血液検査などによる評価をすぐに行っていきます。同時に、外来診療や在宅診療で精査加療をするか、それとも入院による精査加療が必要かの判断も行ないます。また、再発したすいため、しっかりとした心不全管理、その他内科疾患への包括的的管理を受ける体制づくりも重要になってきます。
心不全の治療TREATMENT
心不全の中でも呼吸困難や失神など急に激烈な症状となる急性心不全の場合は、ベッドなどに安静にしてもらいながら、バイタルサインを確認し、酸素濃度が低い場合は酸素投与療法など呼吸のサポートを開始します。前述の心不全の診断を進めながら、急性心筋梗塞や急性肺塞栓などが隠れていないかを評価します。硝酸剤(ニトログリセリンなど)や利尿剤治療を行います。必要あれば、入院加療となります。一方、慢性心不全の治療は、息切れや浮腫みといった心不全症状を改善し生活の質(QOL)を良くすることと心不全による再入院を減らしたり、死亡率を下げたりすることで予後を改善させることを目標とします。慢性心不全患者さんの死亡率を下げたりすることで予後を改善させると複数の研究で証明された薬物治療を積極的に行います。さらに、原因に対する治療を行います。狭心症が原因であれば、バイパス術やカテーテル治療を検討します。弁膜症が原因の場合は、外科的弁置換術・形成術やカテーテルによる治療を検討します。心臓の収縮能力が低い場合は、両室ペーシング療法を、命に関わる不整脈の合併がある場合は、植え込み型電気的除細動器の植え込みを検討します。
心不全に対する当院の取り組みINITIATIVE
- 心不全管理は再発を繰り返すことが多いため、心不全管理にはまめに診察させて頂くこと必要になりますが、オンライン診療により、患者さんの負担を軽減しながら、頻回な診察ができます。
- 心不全管理はモニタリングと評価が重要になりますが、頻回なオンライン診察でのモニタリングや、循環器専門医による直接の診察・検査で心電図や心エコー評価、運動負荷心電図(狭心症を評価する検査)を1回の受診でなるべく短時間で実施し、オンラインで結果説明をするスムーズな診療が可能です。
- 心不全は心不全だけでなく包括的な管理を必要としますが、専門医のハートチームアプローチで治療提案を行っています。