虚血性心疾患とは?ABOUT
心臓は冠動脈という心臓の表面を冠のように走行する動脈により栄養されています。その冠動脈に動脈硬化が生じて、冠動脈が狭まったり(狭窄)、閉じてしまったり(閉塞)して、心臓の筋肉である心筋への血液供給が減少する状態(虚血状態)を引き起こす疾患の総称を虚血性心疾患と言います。冠動脈の動脈硬化による狭窄で、運動したときにだけに虚血を生じる狭心症と冠動脈の動脈硬化が破綻して血栓で閉塞することで心筋壊死を生じる心筋梗塞が虚血性心疾患の代表的な病気です。
虚血性心疾患の症状は?SYMPTONS
心臓が虚血になると、程度は様々ですが、胸の締め付け感や圧迫感などの胸痛症状が生じやすくなります。虚血により、心臓のポンプ機能が低下すると息苦しいなどの心不全による症状がでることもあります。命に関わる血圧低下であるショック状態となったり、命に関わる不整脈(心室頻拍・心室細動)で心肺停止になったりすることもあります。狭心症では、締め付けられるような重苦しさ、圧迫感がある痛みなど数十秒から10分程度の短い胸痛で、休むと症状が消失するという症状が多くみられます。一方で、心筋梗塞では、冷や汗や吐き気を伴う胸を締め付けられるような激しく耐え難い痛みで、20分以上持続する胸痛が特徴的とされています。
虚血性心疾患はどうやって診断するの?DIAGNOSIS
虚血性心疾患の診断は、症状から緊急性を判断します。診察時に症状がある場合などは、すぐに心電図と心筋バイオマーカー(トロポニンIやトロポニンT)評価を行います。急性心筋梗塞が疑われれば、直ちに緊急冠動脈造影を行い、確定診断します。一方で、症状経過から緊急性が低いと判断される場合は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病はないか、喫煙はしていないか、ご家族に(ご両親・ご兄弟)に虚血性心疾患の方はいないか、心臓血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患など)と診断されたことがないかをお聞きして、冠動脈疾患リスクの評価を行います。前述のような症状があるかを確認し、心電図評価を行います。また、心不全の症状である場合もありますので、心臓エコー、血液検査の評価も行います。狭心症が疑われる場合には、運動時の心電図に心筋虚血所見がないかを評価する運動負荷心電図を行います。さらに、微量の放射線物質を注射し、心筋への血流供給を評価する心筋シンチグラフィーや冠動脈造影CTで冠動脈狭窄を評価して、虚血性心疾患の診断を行います。
虚血性心疾患と言われたらINSPECTION
虚血性心疾患と言われたら、循環器専門医の診察を受けることをお勧めします。緊急性がある場合は、専門病院での入院精査加療となります。緊急性がないと判断された場合にも、なるべく早期の前述のような診断が必要となります。また、前述の診断を行いながら、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙の評価および介入、更に薬剤治療を含む予防治療も必要となります。また、虚血性心疾患は心不全の最も多い原因であり、再発もしやすい病気ですので、心不全管理とフォローを受ける環境づくりも重要です。
虚血性心疾患の治療TREATMENT
急性心筋梗塞が疑われれば、直ちに緊急冠動脈造影を行って、確定診断を行ったうえで、再灌流療法が行われます。多くは、緊急カテーテル治療(冠動脈形成術やステント留置術)が行われます。狭心症の場合は、薬物治療から開始されます。血管を広げる薬(ニトログリセリンなど)や血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)が使用されます。また、動脈硬化リスクに対する治療を開始します。高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病への治療、禁煙指導などを行います。その上で、カテーテル治療(冠動脈形成術やステント留置術)、バイパス手術(狭窄・閉塞部位を迂回して血液を流す手術)が必要か、どちらの治療法が最適かなどをハートチームで協議し、適切な情報共有に基づき、治療方針を決定していくことになります。
虚血性心疾患に対する当院の取り組みINITIATIVE
- 虚血性心疾患は心不全の合併症が多く、再発を繰り返すことが多いため、心不全管理とフォローのためにまめに診察させて頂くこと必要になりますが、オンライン診療により、患者さんの負担を軽減しながら、頻回な診察ができます。
- 虚血性心疾患と心不全などの合併症は、モニタリングと評価が重要になりますが、頻回なオンライン診察でのモニタリングや、循環器専門医、脈管専門医、カテーテル治療専門医による直接の診察・検査で心電図や心エコー評価、運動負荷心電図(狭心症を評価する検査)を1回の受診でなるべく短時間で実施し、オンラインで結果説明をするスムーズな診療が可能です。
- 虚血性心疾患はリスク管理、心不全管理、再発管理など包括的な管理を必要としますが、専門医のハートチームアプローチで治療提案を行っています。